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ウェザーリポート – ジャズの終宴

私が最初に「聴けた」ジャズのCDは、セロニアス・モンクというピアニストの「モンク・イン・トーキョー」という作品でした。

学生のころ、なんとかジャズを「聴きたい!」「分かりたい!」と思って、当時安価で買えた怪しいCDを聴き漁ったのですが、挫折しました。。

その後もう一度挑戦してみたくなって、「よく分からないけど、いいな♪」と唯一心に残っていた上記1枚の正体を探るところから始めたのですが、そのCDのジャケットには、ただ「セロニアス・モンク」とだけ書いてあって、そもそもオリジナルのアルバムなのか、それとも色んな演奏を集めた企画ものなのか、まったく分からない状態からの手探りでした。

…結果、毎日のようにCDショップに通っては、本当に「ジャケット買い」を繰り返す生活を強いられることになりました。もう、フィーリングで選ぶ以外に方法はなくって、でも結局、それがことジャズについて言えば、正しいお近づきの仕方だったように思います。

「おしゃれ」な感じがジャズにはあって、私もそれに惹かれて近づいたのは確かなのですが、おしゃれに感じても、どうしても自分には合わないものもあれば、全然おしゃれではないのに、なんとなくいいな♪と思えるものもあり。。とどのつまりそれは、「自分と向き合う」「自分のセンスを知る」という行為なのでしょう。

セロニアス・モンクは「ブリリアント・コーナーズ」「モンクス・ミュージック」あたりが当時オススメされていて、しばらくの間よく聴きました。今でも聴くのは「セロニアス・モンク・トリオ」と「ソロ・モンク」の2枚です。「モンク・イン・トーキョー」は、探し当てるまでに多分2年くらい費やしたと思うのですが、「あ!この音だ♪」という再会の感激はあったものの、私の中でのモンク熱は、既に冷めたあとでした。

 

ウェザーリポートというグループを、取り上げたいと思います。理由はタイトルに「ジャズの終宴」と書いてしまいましたが、酷いお話ですけれどこれから先、ジャズっぽい音楽が世界的に大人気になることは、多分ないと思うのです。そうすると、このウェザーリポートが、ジャズっぽいミュージシャンの中で最後のスーパースターということになるわけです。

やっぱり、「有名なミュージシャン」「売れた作品」の方が、「誰も知らない」「まったく売れていない」ものよりは、より多くの人の好みに近い可能性が高いと思いますし、どうせなら新しい作品の方が、音質がよいので聴くのにも苦労しないと思います。

ウェザーリポートは、実は学生のころにも一度挑戦しています。「ナイト・パッセージ」というアルバムだったのですが、まったくよさが分かりませんでした。。ですのでジャズ再挑戦の折も、実はウェザーリポートは文字通り最後の最後まで敬遠し続けました。

再度手を出したきっかけは、よく覚えています。2枚組以上の、長いジャズを聴きたかった時期がありまして、マイルス・デイヴィスとキース・ジャレットを文字通り聴き潰し、モダン・ジャズ・カルテットに至り、その次を探していたのですが、ウェザーリポートの「8:30」(2枚組)そして、当時発売されたばかりの「レジェンダリー・ライヴ・テープス1978-1981」(4枚組)以外、本当に何も見つからなかったのです。

佐村河内守についての記事でも触れましたが、「フォーマット」も、ジャズやクラシックを聴く際の「付き合い方」の、重要なポイントだと私は思います。演奏時間の長さとか、CDを入れ替えしながら聴くのか、iPhoneに入れてずっと聴き通すのか、はたまた拍手や雑音の多いライヴ演奏か、端正なスタジオ録音か、など。

そういう意味でも「8:30」は、最初嫌々聴いたにも関わらず、とてもおもしろいアルバムでした。2枚組という長尺ですが、スタジオ演奏とライヴ演奏を織り交ぜ、表情がものすごく変わるのです。どちらがよい、ではなくって、その変化自体が「あ、いいな♪」と気に入って、次にとても有名な「ヘビー・ウェザー」を聴きました。

こちらは40分程度の1枚組ですが、その分ぎっしり密度が濃い感じがして、また、「8:30」や「レジェンダリー・ライヴ・テープス1978-1981」よりもスタジオ風味が強く、「ウェザーリポートって、スタジオ録音だとこんなにキャッチーで親しみやすく、逆にライヴになるとあんなにぐちゃぐちゃでメチャクチャになるんだ〜」と、このあたりからどっぷりと「ハマり」始めました♪

他方、学生のころに聴いた「ナイト・パッセージ」は、改めて聴いてもよさは分かりませんでした。。「ヘビー・ウェザー」よりも後に作成されたこのアルバムからは、既に熱気が消えてしまっていて、きっと、より端正な音楽なのだろうとは思うのですが、なんだか温泉を掘ろうとしてうまくいかない感じというか、聴くたびに「やっぱり、これを好きになるのは諦めた方がいいのかな?」的な徒労感があります。

 

演奏のレビューとか作品の背景とかでは全然なく、私の側の都合と気分の紹介になってしまいましたが、ことジャズ系の音楽を人にオススメするのであれば、フィーリングやきっかけを無視するわけにはいかないと、密かに思っています。

果たしてこんな記事が、誰かのお役に立てるかどうか、極めて怪しいですけれど、そうですね。。そういう意味では次の機会には、「私をどん底から救ってくれた1枚」を、ご紹介しようかしら。

…一体、どれだろう?

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