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遠州灘 – 眩しい闇

私は北関東に住んでおりまして、クルマで静岡方面に向かう場合は東名高速道路を使うことになります。

浜松からお隣り愛知県の豊橋、豊川、田原辺りにかけてはお友だちも多く、訪れるたびに心躍る再会があり、新たな思い出を作り、嬉しさ冷めやらぬうちに美化される寂寥感を抱きつつ帰路に着くのですが、繰り返し、定期的に旅しておりますので、ある程度お決まりのコースも出来あがっています。

この記事は、関東からクルマで東海地方への旅を計画されている方に、「半地元」的な素敵スポットをご紹介できたら♪という思いでしたためました。

 

まずは東名高速の乗り方です。こればかりは、どこにお住まいかで、どうしようもない部分もあるのですが、渋谷方面から東名の始点に入る乗るよりは、横浜回りで、「保土ヶ谷バイパス」を経由する方がストレスは少ないと思います。(日本橋始点で、12キロほど遠回りにはなります。。)

保土ヶ谷バイパスを経由するルート

東名はどうしても混みますし、特に料金所付近では大型のトラックの威圧感もプレッシャーになるので、保土ヶ谷バイパス経由の方が、少しだけ落ち着いた気持ちで運転ができると思います。

普通のルート

最近のクルマは、高速道路ではほぼ自動運転というものも多いかと思います。東名も然り、クルマの機能如何に因らず、ドライバーは好む好まぬに関わらず、道なりに南下するしかありません。が、そんなのんびりドライブにも、やがて新東名と(旧)東名の分岐点という決断のときが、時速100キロで近づいてまいります。。一体どちらがよいものか、あるいはどちらでもよいのか、決めかねる方も多いのではないでしょうか。

私のオススメは、(旧)東名です。新しく路面もしっかりしている新東名は山々をトンネルで貫き、高速巡航が楽しめますが風景は単調になりがちです。一方(旧)東名は、新東名との分岐点を過ぎしばらくすると、前方左側一面にぱっと海が広がります♪

ぜひ、「由比PA」にお立ち寄りください。駐車場は縦一列ですので、混んでいるようであれば、見つけた空きスペースに迷わず滑り込むことをオススメします。ここはお手洗いはありますが、売店はジュースの自販機1台のみです。

…たとえば、神奈川にお住まいの方にとってはそんなこともないかも知れませんが、北関東からドライブして、この由比PAでクルマのドアを開けるといつもはっとします。温暖な気候というに留まらない空気の違い。明らかな開放感が、潮風と共に鼻腔をくすぐります♪

 

さて、取り敢えずは静岡県、東海地方にまでは辿り着きました。このさきどこを目指すか?ですが、3ヶ所ほどオススメスポットを挙げるとするならば、「御前崎」「浜松」「伊良湖岬」を私はチョイスします。

手前からそれぞれ、ご案内しましょう。

まずは御前崎です。東名を相良牧の原ICで下り、あとはナビ通りに進みます。御前崎周辺には、無料の市営駐車場がいくつもあるので、クルマを停めるところには困らないと思います。お土産屋さんは、岬の先端より関東側に並んでいますが、オススメは岬をぐるっと回った関西側です。

そこは遠州灘。どこどこまでも見渡せる海岸線。荒々しくも雄大な波。そして夕刻には太平洋に沈みゆく太陽を、ずーっと眺め続けていられます♪(その気になれば、クルマのフロントガラス越しに翌朝まで)

…それはちょっとやり過ぎとしても、適当な無料駐車場にクルマを停めたならば、高台にそびえ立つ灯台を目指して、そこかしこにある小径を登っていきましょう。散策ルートと民家の庭があまり明確に分かれておらず、ちょっと恐縮はしてしまいますが、そんな「どっちつかず」感もまた心躍るものです。

「猫塚」「ねずみ塚」という、観光名所というほどでもない地元の史跡を訪ねるのだと自分に言い訳しつつ、のどかな丘の上をのんびり散策します。灯台を目印にすれば、道に迷ってもなんとかなります。お土産屋さんは17時には閉まってしまいますが、灯台から坂を下りたところにある「パシフィック・カフェ」は、土日は22時まで開店しています。

カフェやスイーツだけでなく、存外しっかりとした食事もいただけます。ガラス越しに闇夜から押し寄せる遠州灘の波の音を聞きながら。

 

続いては、浜松のオススメスポットです。

…これは一人旅だったり、気の合うお友だちとの二人旅という場合の、ちょっと正攻法ではない旅で使えるワザなのですが、関東から東海地方へのクルマでの旅行となれば、宿泊場所の確保は大切ですよね。

私も以前は、浜松の駅前のビジネスホテルを拠点にして、今日は○○さんとカフェでお喋り、明日は△△さんの案内で史跡巡りを…、という具合に活動していたのですが数年前、あるときを境にホテルの予約がまったく取れなくなったり、以前と比べて3倍近いお値段になったりするようになりました。。

それ以降、私は袋井ICで高速を下りて愛野駅周辺にいくつかある、一人でも宿泊できるラブホテルを利用してしまうことが多くなりました。(民泊問題で、行政もラブホテル業界に期待している風潮もあるようですし、実際浜松近辺のホテルはすでに飽和しており、一人利用が可能な店舗は今後増えていくのではないでしょうか。ただ、お子さま連れの方は難しいと思います。。)

たとえば、ですが、土日のお休みをめいっぱいに使って東海地方に旅行をする場合、金曜日の深夜に自宅を発ちます。由比PAに立ち寄り、袋井ICで高速を下りる時間を5時前後に設定しておくと、6時からフリータイムで12時間、ゆっくりと泊まれるお部屋がいくつもあります。(浜松近辺は、ラブホテルの空き状況も厳しいので、もし愛野駅周辺でも見つからない場合、下道で御前崎方面に戻るようにクルマを走らせると、道沿いに何軒かあり比較的空きがあるようです)

土曜日は午後からゆっくりと活動し、早めに前日と同じようなホテルを確保。翌日曜日は普通に観光をして、陽が落ちてからへとへとになりながら関東に戻る。。というアバウトな旅のプランになります。行き当たりばったりのドライブ旅行と割り切れば、ホテルを探しながら知らない土地を巡るのも楽しいものです。(運転の疲労には、十分にお気をつけください)

浜松そのものは、鰻や天竜川、浜名湖などオススメには事欠きません。関東から東海地方への旅、というテーマに沿えば、鰻が苦手という方でなければ、ぜひ関西風の鰻にチャレンジしていただきたいと思います。(リンク先のお店は一例ですが、浜松で関西風を、ということであれば、こちらが筆頭格かと思います)

 

最後に伊良湖岬です。関東側から見ると遠州灘は、御前崎に始まり伊良湖岬で終わります。

東海地震が何十年も前から懸念されている地域ですが、この遠州灘沿いのなだらかな土地には、「ここまで津波が来たよ」という石碑が残されているそうです。東北の震災のときにも、千年前の津波の高さを記した遺跡があったと聞きますが、決して埋もれさせてはいけない伝承です。

…毎年3月11日14時46分、私も黙祷を捧げていますが、目を瞑りながら、2011年のこの瞬間にはまだ、あの震災で亡くなった方の殆どがまだ存命でおられたこと。地震そのものではなく津波によって、多くの命が失われたことに、やるせない思いを抱きます。

 

話題と気分を戻します。

伊良湖岬への道は国道1号線で、右手は浜名湖に、左手は太平洋に臨みながらのドライブとなります。この道はファンも多い、走っているだけで恍惚となる素晴らしい道路です。

「一国」を逸れて田原市、そして伊良湖岬を目指します。…田原市在住の私のお友だちは、「ここは観光地だから」とふた言目には言い、色々なスポットを案内してくれるのですが、軽井沢や那須などの「超有名観光地」に毒されている私などには、「アウトレットモールもないし、コンビニの看板も茶色じゃないし。。」と、やや「????」なところもあります。

でも、温暖な気候に恵まれ、特に国内有数のお花の産地として名を馳せるここ渥美半島は、御前崎とも空気感は等質で、関東とはどこか異なります。音楽の授業で習った「名も知らぬ、遠き島より〜♪」と始まる「椰子の実」は、伊良湖岬をテーマに作られた詩だそうで、歌碑もあります。

伊良湖岬に向かうドライブは、「今私は、地上の終点に向かっているんだー」という気持ちにさせられます。時代に取り残された感というか、ぽつんと明かりを灯すコンビニのがらがらな様とか、古びた看板。…そして目的に到着すると、気をつけていないとそのままくるんと道は岬の先端でUターンし、いつの間にか帰路に着いてしまいます。。

無料の駐車場はいくつかあるのですが、いずれも土地勘がないとやや逸れるには勇気のいる、横道の先にあります。

地元のお友だちに、いくつもの素敵な場所を案内してもらっている私ですが、ここでは2つほど、伊良湖岬の楽しみ方をご紹介したいと思います。

ひとつ目は伊良湖岬名産「大あさり」です。それを観光地然とした恋路ヶ浜ではなく、日の出石門駐車場にある中華食堂「日出丸」さんでいただく、というプランです。

…カミング・アウトしますが、私は「怪しいもの」が大好きです♪この日はいろいろあって、夕暮れ時に伊良湖岬に到着しました。(この「いろいろ」は、もうひとつのオススメプランなので、後ほどご紹介します)いろいろあったせいでへとへとで、最初は恋路ヶ浜で夕暮れを眺めながら、「まさか、このまま車中泊?」という感じで、でも心の中は充実感いっぱいで、うとうとしていました。

夜の帳も下りた19時ごろでしょうか。お土産屋さんは既に閉まっており、もちろんホテルも予約はしていないしお腹も空いたので、このまま豊橋辺りまで戻ろうかな。。とクルマを発進させたのですが、予想以上に体力を消耗していたみたいで、ふらふらと近くの別の駐車場に吸い込まれてしまいました。

「もう、ここで一度休んでしまおう!」半ばそう決心して、駐車場の端にある怪しいトイレを借りようとクルマを降りました。人気はありません。人気がない、というよりも、人がいません。

ふと、煌煌とした明かりが視界の端に入りました。「ラーメン」「大アサリ」と書かれたのぼりがはためいています。「ああ、ここは市場なんだぁ」「漁師さん向けの食堂だね〜」「きっと朝4時くらいに開店して、午前中で閉めちゃうんだろうな〜」

…違いました。お店、開いています。中でビールを飲んでいるお客さんが見えます。恐る恐る近づくと、20時半まで営業しているようです。

夜の日出丸さん近影

慌ててクルマに戻り、旅の連れ(このときは二人旅でした)に「あの明かり、中華屋さん!」「まだやってる!」「他のお客さんもいる!(これ重要)」「大アサリもある(らしい)!」と報告し、ぐだぐだ悩んだ挙句、意を決して二人で入ってみることにしました。

それまで伊良湖岬には何度か連れてきてもらっていましたが、大アサリはいただいたことがなくって、豊橋への帰り道に何故かコメダ珈琲でメンチカツサンドを食べた記憶をだけ、鮮やかにも恨めしく抱いていました。

ボリューム満点のお料理に、想像以上に巨大だった大アサリ。…加えてお会計時には、「売店の方で、今売り出し中なんです」というマドレーヌをいただいてしまい、「この上ない怪しさ」に惹かれて入ったくせに、すっかり豪華でうきうきな気分になってしまったのでした♪

 

時系列的には、このときの旅はこのあと一国を箱根の手前まで走り続け、途中大アサリのエネルギーも切れ、東名に乗って帰宅したのですが、先述の「へとへと」のわけをまだお話していません。

夕刻に伊良湖岬に着いた旅路は、実は陸路ではなく志摩半島の鳥羽から出ているフェリーを使っての船旅でした。

東名を岡崎方面まで下り、伊勢湾岸自動車道に乗り換えたこのときの旅の前半部分も、「伊勢神宮LOVE」をこじらせた暁にはご紹介するやも知れませんが、今は東海地方、伊良湖岬にフォーカスして、その魅力をお伝えできるよう心がけます。

伊良湖岬からは、知多半島をスルーして鳥羽までフェリーが出ています。片道約50分。「地上の終点」から、別の陸地に降り立つというのは、異世界に来たような気分になります。(実際には異世界から、地上の始点に降り立ったわけですが。。)

従って、実は私自身未体験の、バーチャルな(無責任ともいう)オススメになってしまうのですが、ぜひ伊良湖岬からフェリーで志摩に渡っていただければと思います。

 

この記事の「遠州灘」というタイトルに込めたかった雰囲気・想いは、「関東から移動して東海地方に降り立つ、その瞬間に感じる空気の違い」です。

もちろん、この土地に個人的な愛着があり、心で繋がった大切な人たちがいるからなのですが、霜柱の立つ北関東の冬から逃れるように(鰻も実のところ、旬は冬場ですし)訪れる遠州灘に限らず、それが真夏であっても、空気感の違いは明らかです。

体の芯で凝り固まった緊張がほぐれる。

思わず心がにやけちゃう。

静岡西部、そして、愛知県の豊橋、田原という、遠州灘に臨む地域の人たちは、自分たちの地元を「いいところだよー」と憚ることなく口にします。もちろん私も、自分の住む土地に誇りを持っていますが、地元の名所を訪れたり、関東以北や信州などへの旅とは色合いが違って、東海地方には湯治に行くような安堵感が伴います。

疲れはするけれども、確実に癒やされて帰ってこれるような。

「命の洗濯」。ぱりっと、洗いたての自分になれるような。

…もしお一人でも、この記事を読んで東海地方に小旅行をしてみたいと思っていただければ、こんな嬉しいことはありません。拙い文章、まとまりに欠け、要点の曖昧な情報で恐縮ですが、かつてとある詩人が願った「5月の風をゼリーにして」お届けする。

そんな文章を目指して、これからも言葉を紡いでいきたいです。

 

最後に、もう何か所か、「やっぱり、関東とは違うよね〜」というヘンなスポットをご紹介します。

  • 蓬莱橋:…普通、落ちると思います。怖いです。関東や関西であれば、今どきこんな危険な場所はすみやかになくしてしまうと思います。
  • 雲名橋:浜松は、天竜川をどこどこまでも遡っていくと、そのうち長野県に至ります。静岡県全般に言えることですが、海沿いからでも、遠くの山並みが数多のグラデーションを重ねて連なります。こちらの橋、そして周辺は「浜松の山の中」という、なんとなく海とか湖っぽい浜松の、別の表情を見せてくれる風光明媚な場所です。地元の人たちは普通に「河川浴」をするというのも、ちょっと関東民としては???です。
  • さわやか:知る人ぞ知る、ほぼ静岡県にしかない地元の有名ハンバーグ屋さんです。お肉がすごく生々しくって、正直私は苦手なタイプのハンバーグなのですが、さわやかのハンバーグだったら、おいしくいただけちゃいます♪既にご存知じの非静岡県民の方は、「いつ行っても混んでる!」というイメージをお持ちと思いますし、店舗はたくさんあるにも関わらず、実際3時間待ちは普通です。。…ただ、ちょっとだけコツはありまして、関東や名古屋方面の方は、どうしても「自分の住んでいる地域から一番近い」店舗に集中しちゃうんですね。そしてさわやかは、「工場から1時間以内で配送できる場所にしか店舗を構えない」というポリシーがあるらしく、その工場から離れれば離れるほど、店舗数も少なくなっていくのです。したがいまして、工場がある袋井市を中心に、…そうですね。私は藤枝市の店舗などは、結構空いている印象を持っています。
  • スマル亭1号店:関東への帰路を高速を使わず、一国を往路の由比PAを過ぎるあたりまで走っていくと、みんなすごく飛ばすなだらかなカーブの途中、猫の額のような場所にこちらのお店はあります。スマル亭も静岡地元のB級グルメ店です。その雰囲気だけでも話の種になるかと思いますが…、押しボタン式の横断歩道が、駐車場の隅にあります。道路を渡っても東名高速以外、何かがあるようには、今でも私には思えないのですが、とにかく渡れます。下に降りる階段があって、それはそのまま東名の上り線を潜るトンネルになっておりその先には。。ご興味のある方は、ぜひご自身の目と足とで、お確かめくださいませ。

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