ジャズって本当におしゃれ?
…10年以上、考えています。
「ジャズって本当におしゃれな音楽なのだろうか?」と。
そういう「雰囲気」があることは私にも分かりますし、実際ジャズ系の音楽が流れるお店のおしゃれっぽさも、存分に楽しんではいるのです。
それでも。。
「ルパン」はジャズ?
たとえば、「ルパン三世」の音楽って、多くの方が「ジャズっぽい」と感じることとおもいます。
私もそう感じますが不思議なことに、それが「普段自分が聴いているジャズとはちがう」とも感じるのです。。なぜか?
私の疑問を整理したものを、箇条書きで、できるだけ簡潔にまとめてみますね。
- ルパンのジャズは、「ビッグバンド・ジャズ」「スウィング・ジャズ」「ディキシーランド・ジャズ」などと呼ばれるジャズの「中分類」に聞こえる。
- ビックバンド・ジャズの代表的なミュージシャン(バンド・リーダー)は、デューク・エリントン(1899-1974)、カウント・ベイシー(1904-1984)、バディ・リッチ(1917-1987)など。
- ビッグバンド・ジャズは、私、というか日本の一般的なジャズ・リスナーが聴くジャズよりも、演奏者が多いことが分かりやすい一番の違い。
- 「日本の一般的なジャズ・リスナー」とか、言ってしまいましたが、私がふだん聴いているジャズは、「モダン・ジャズ」と言われる中分類になるかと。
- チャーリー・パーカー(1920-1955)、マイルス・デイヴィス(1926-1991)がとみに有名。
- 「トリオ」(3人)「クァルテット」(4人)「クインテット」(5人)というかんじで、メンバーが少なめ。
- 「ジャズっぽい」音楽が流れる映像作品で、それが「モダン・ジャズっぽく」聞こえることはほとんど皆無。。
…そして、ルパンの劇中に流れる音楽で、おしゃれな曲って、どれか思いつきますでしょうか?
おしゃれなジャズ♪
あらためて真剣に考えてみると、けっこう、難しい問いです。。
正直なところ、ぱっと思い浮かぶものは、この1枚を除いてほかにありません。
【ビル・エヴァンス:ワルツ・フォー・デビイ】
もちろん、感じ方は人それぞれなのですが、そもそもこのワルツ・フォー・デビイを含めた「モダン・ジャズ」の特徴というのが、ビッグバンド・ジャズと同様に、別におしゃれなんかではないところに、問題の根本原因があるようにおもいます。
- アドリブの生々しさ!
- メロディックさはむしろ拒絶する!
- リラックスして聴く音楽ではない!
私見に過ぎませんがこのあたりが、およそファンがモダン・ジャズを好んで聴く理由ではないでしょうか?
「えっ?この演奏なに?誰?」
という出会いが、モダン・ジャズにおいてはものすごく、たいせつだと感じています。
それまで名前を聴いたこともないジャズ・マンの優れた演奏を発見して、「これ、いいでしょ!」みたいな自慢をしたがるとか。…従って「レア盤」にものすごく弱いのですね。我が国のモダン・ジャズ・ファンは。
僭越ながら私も、こちらの演奏をちょっと、ご紹介させていただきたいです♪
【ジョン・ヒックス・トリオ:枯葉】
とあるお店で、ほんとうに偶然に聴きつけたのですが、私のような半端者ではなく、日本で(「の」ではなく)ジャズを聴き込んでこられた方にもご試聴いただけたら、嬉しいです♪
…十分に熱気があって、別におしゃれとかではなくって、そして入門本で取り上げられるほど有名なミュージシャンでもアルバムでもないという意味で、私にとって一番「ジャズ的な出会い方」をした演奏が、こちらなのです♪
おしゃれってなに?
結局のところ、こんな風に総括できるかとおもうのです。
- ジャズを流して、おしゃれな雰囲気を醸し出すお店はたくさんある。
- モダン・ジャズの小規模な生楽器編成(特にピアノ)が、おしゃれな雰囲気を生み出す要因と考えられる。
- ジャズがおしゃれな雰囲気を生み出すのであって、お客さんがジャズをおしゃれだと思って聞いているわけでは、多分ない。
- おそらくお客さんは音楽など聴いていない。
- そもそも、まじめに聴いてしまったら「雰囲気」など楽しめない。
まさに、ワルツ・フォー・デビイです。観客の笑い声や、グラスのかちん♪と鳴る音まで含めたこの作品を聴けば、1961年6月25日にニューヨークのヴィレッジヴァンガードでその場に居合わせた人々が、いかに演奏に集中していないかをうかがい知ることができるかとおもいます。
と同時に、空気感も併せて録音されたこの作品が、やっぱり「ジャズが鳴っているおしゃれな空間」の典型なのかな?と。
おしゃれさをブランドに喩える
あまり意味はありませんが、「ジャズはおしゃれ!」は容易に成立しても、「おしゃれなジャズ♪」を挙げることはけっこうむつかしいと思う私の立場から、おしゃれなジャズの自薦を2枚ほど、バッグとかのブランド・イメージと絡めてご紹介申し上げます♪
- エルメス:(該当なし)
- ルイ・ヴィトン:ワルツ・フォー・デビイ(ビル・エヴァンス・トリオ)
- プラダ:ミーツ・ザ・リズムセクション(アート・ペッパー&マイルス・デイヴィスのリズム・セクション)
…しょせんは私見でしかありません。ただ、ワルツ・フォー・デビイとミーツ・ザ・リズムセクションの2枚を挙げるにあたって、その「格」とか、「雰囲気」とか、「テイスト」などを、表現してみたかったのです♪
エルメスは、、調べれば調べるほど特別なブランドなので、モダン・ジャズという「マーケット」にはそれに該当するアルバムはないとおもいます。。
マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」は?と思われる方は多いかもしれません。…でも、カインド・オブ・ブルーを「おしゃれ~♪」とか言ってしまってよいものか。。私にはそこが憚られます。
ブランドものにご興味のない方向けに、私の個人的な体験と感想でエルメスをご説明いたしますと、ずばり「商店街のおさかなやさん」です。
…銀座のエルメス旗艦店内を、買えもしないのにうろうろとしていたときのお話です。
華奢でとてもきれいなお姉さんが、iPadのケースを探していました。店員さんに、「これの色違いってないんですか?」と、ビビッドな青いクロコダイル製のケースを指さして尋ねました。
店員さんいわく、「今はこれしかありません。入荷の予定も未定です。ちなみに今ですと1,500,000円ですが、来月からは1,700,000円になります」
思いつめたような表情でしばらく悩んだあと、そのお姉さんは「これを、ください」と、カードの一括払いで購入していきました。。
お得意さまでもない限り、もう、そこにあるものから選ぶしかなくって、予約もできず、入荷予定も分からない。
エルメス銀座店は、どう考えても日本では一番大きな店舗だとおもうのですが、びっくりするくらいショーケースはガラガラで、夜8時のおさかなやさんの品揃えそのものでした。。
ブランド力ここに極まれり、と思い知らされた次第です。
ヴィトンくらいの、「高ぁ~い」というイメージと、ポピュラーさと大衆っぽさと、でもやっぱり欲しい♪というイメージから、「ブランドを超えていないブランド」の筆頭格として、ワルツ・フォー・デビイを当てはめてみました♪
そのくらい、両者とも分かりやすく消費者を満足させてくれる逸品だとおもいます。
プラダは、「マニッシュさ」から選んでみました。「男性的(だけどあくまで女性ものの)オシャレさ」という意味です。
アート・ペッパーご本人のイケメン・ジャケットと、モダン・ジャズとしては幾分おとなしめな演奏内容。そして、オーディオ・マニアの方にとってリファレンスとなる録音のよさを素養として持ち、「名盤なんだけど~?」という歯切れの悪さが、むしろブランドものの「テイスト」をうまく表現してくれているかな?みたいな。
音楽との出会い。普段通りに過ごしていても、あっコレいいよね。という具合いにふと気付く瞬間であったり、ふらっと出掛けた先で思いがけないシチュエーションから心に響くのはとても嬉しいものです。
ご紹介のあった枯れ葉。素直に いいですねぇ。
わたしにとってこちらの演奏はクリックして所謂、音から入った訳ですがそのシチュエーションは 金曜日、夕闇前のオープンカフェテラス、お酒を少し頂きながら銀杏の黄色い葉っぱが仲間との会話に彩りを添えながら地表に拡がって行く様をイメージ、
束の間、心地好い場所を彷徨う事が出来ました。(#^.^#)
Akinaさん
コメントありがとうございます♪
はい。ジョン・ヒックス。
ハンク・ジョーンズとかトミー・フラナガン的「名サイドマン」として一部で名高いようですが、アルバムはそれまで聴いたことがありませんでした。。
これから「歴史的名盤を生み出す可能性のある現役ジャズマン」として、私はブラッド・メルドーを強くオススメしています♪
好みは分かれそうですが、2枚組の「ハイウェイ・ライダー」は、日曜日の夕暮れの胡乱なクルマの中で浸っていたい音楽です。