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ストラディバリウスをファイブスター物語に喩えて説明してみる

ストラディバリウスの正体

平たく申し上げれば、ファイブスター物語のファティマ(今はオートマティック・フラワーズでしたっけ?)と似たようなイメージで、私たち庶民は理解するのが分かりやすいかと、かなり以前からかんがえています。

定期的に「どこかのお金持ちがストラディバリウスを買った」というニュースは出てきますので、時事ネタとして埋もれることもない情報かと、おもっております。

…また、「ファイブスター物語」(以下、FSS)とか言ってしまいましたが、ストラディバリウス以上に、それをご存知の方も少ないかと思いますので、特に「ファティマ」という作中の存在については、私の知見の限り、きちんとご説明申し上げたいです。

ストラディバリウスの社会的価値

まずはファティマについてです。ファティマとは、FSSという巨大ロボット同士が戦う漫画に登場する、美しい女性の姿をした(稀に美しい少年もいる)ロボットの操縦オペレーターです。人間ではなくって、遺伝子操作によって人為的に生み出された人造人間です。

兵器の一部ですので、戦闘能力という絶対評価がありますが、他方製作者が著名だったり、ファティマ本人に色々泊がついている場合、「モノとしての女性的価値」が生じ、それを手に入れるロボットの操縦士にも、相応の資格・資質が求められます。

「バランシェ」「カーバイト」というふたりが、作中の代表的なファティマ製作者です。ちょうど「ストラディバリ」(ストラディバリウスの作者)「グァルネリ」に相当しますね。

【ファイブスター物語 リブート(6)】

※以降のエピソードは特に断りのない限り、本巻のページ数でご紹介します。

…他方ストラディバリウスについてですが。。およそファティマの例をそのまま適用できてしまう気がしてきました。ストラディバリウスに関する説明は割愛させていただきます。

歴史的経緯としては、イギリスのヒル商会という会社が、ストラディバリウスにプレミアをつけるということを最初に始めたと言われています。文京楽器というお店のサイトに説明がありました。

ストラディバリウスの楽器としての価値

テレビで、ストラディバリウスと現代の安いバイオリンの音の違いを聴き分けるという企画があります。

ストラディバリウスは、現代の楽器でも再現できない素晴らしい音を出す銘器という伝説がある故に、成り立つアイデアですね。

ストラディバリウスが楽器として優れている理由のひとつとして挙げられていた「木は250年くらい経ったものが一番状態がいいから」という説は、製造後100年くらいの時点で既にストラディバリウスの評価が高かったことから、信用に値しません。

…子供の頃からそうはおもっていたのですが、先程ウィキペディアを見たところ、ちゃんと否定されていました。

ちなみに「昔のものの方が優れている」的エピソードはFSSでは、「インタシティ」というファティマのお話で描かれています。(p.129-171)

すべてのストラディバリウスは音がよい?

ちょっとお話が脱線しますが、私は「おさかなやさん」という商売が、不思議で仕方がありません。。

おさかなやさんは、自分でおさかなを作るわけでも、育てるわけでもないのに、おいしいおさかなを扱うと言われる「名店」が確かに存在します。

そして、そういうお店のおさかなは、個々のおさかなは決して同じ設計図で作られているわけでも同じ製造管理をされているわけでもないでしょうに、総じて美味しいのです。

 

…かなり以前、都内の大手鮮魚店の「エース」と呼ばれる方のお話を間接的に伺ったことがありまして、まとめると、

  • お休みの日は大抵全国の市場に足を向ける。
  • 自分の舌で良し悪しを判断する。
  • よいおさかなを扱っている卸売業者とコネクションを作っておく。

みたいですね。

よいストラディバリウスと、よくないストラディバリウスは、確実に存在します。

追って、そのあたりのお話もさせてください。

クラシック業界でのストラディバリウス

日本音楽財団という、とても安直な名前の組織があります。

日本がバブルでお金持ちだったころに、有り余るお金でストラディバリウスとグァルネリを買い集め、それを将来有望な音楽家に無償で貸し出すという事業を行っているそうです。

…このように書くとただのいかがわしい法人ですが、東日本大震災の直後に日本音楽財団は、保有する楽器のかなりの数をオークションに出品し、その収益を震災復興に寄付しています。

また、「無償でストラディバリウスを貸し出す」というところにも、結構なドラマがあったりします。

FSSでは、エストとヨーンの出会いと別れのエピソードが、分かりやすく似ているのでご興味がある方はぜひご一読ください!(p.253-321)

以下、私がCDを持っている「日本音楽財団からストラディバリウスを無償で永久貸与してもらっているバイオリニスト」です。

  • 諏訪内晶子

…以前調べたときには、ヒラリー・ハーンもそうだった気がしたのですが、そんな情報は見つかりませんね。。

日本人バイオリニスト諏訪内晶子が無償貸与を受けているストラディバリウスは、「ドルフィン」という個体です。

楽器としての性能は分かりませんが、「ドルフィン」は、ヤッシャ・ハイフェッツ(1901-1987)という人が使っていた一挺です。

ハイフェッツは、史上最高のバイオリニストとして名高く、その楽器を継承したことの意義は、この演奏家に対する日本音楽財団の期待を表すと言ってよいでしょう。

FSSでいうならばもう、ラキシスを自分(が生きている間は専属)のファティマとして使うみたいなレベルです。(リブート6巻ではありませんが、FSS第1巻第1話参照)…プレッシャー、半端ないですね!(ただし、楽器としての性能は判断がつきません)

永久貸与と期限付き貸与

ヒラリー・ハーンは、期限付き貸与だったのか、あるいは私の記憶違いで、そもそもストラディバリウスなど使っていなかったのか、不明ですが、期限付き貸与を受けた演奏家のかわいそうなお話を、たまに耳にします。(これがエストとヨーンのお話です)

ストラディバリウスを使えている間は、演奏家としてお仕事が来るそうですが、取り上げられて「自分の楽器」が変わった途端に、見向きもされなくなるという。。

…ちなみに「無償貸与」とは言いますが、本当にただで手元に置いておけるわけではなく、年間300万円前後の保険料は自分で払う必要があります。

「君の将来に期待して、楽器は無償で貸そう。でも、その楽器を預けられたプロなんだから、保険料は自分で稼いで払ってね」

ということでしょうか。

 

日本では、クラシック・ミュージシャンと呼べるかどうかは定かでありませんが、葉加瀬太郎は、ストラディバリウスではなく数億円の最新のバイオリンを使っています。

ストラディバリウスという付加価値を、自分の「音」に上乗せする必要を、彼は感じていないのでしょう。

音の悪いストラディバリウス

…ご興味のある方は、「デュランティ」で検索いただければとおもいます。このストラディバリウスは、「楽器としての寿命は既に尽きている」と一時期ストラディバリウス界隈で話題にのぼった一挺です。

今の所有者は楽しそうに、

「もっと私を歌わせて!と楽器が言っているんです♪」

と発言されている記事を見たことがあります。背景はどうあれ、愛されるモノは幸せですよね!

まとめます
  • 演奏家は、ストラディバリウスの「音」以上に、その「銘」を自分の力にしたい。
  • エルメスやフェラーリ同様、「謎の多い伝説」は「銘」にはぜったいに必要なので、ストラディバリウスの音は特別ではないなどとは、ただでさえ話題が乏しいクラシック音楽ビジネス的には言えない。
  • 音なんて好みです。
  • でも、「このCDのバイオリンはストラディバリウスなんですよ♪」と言われれば興味は湧きます。
  • 演奏会では、さらにそれが「見られ」ます。行きたくなります。
  • FSSでもファティマは「騎士」という選ばれた者しか所有できず、99.9..%の庶民にとっては、憧れを超えた特殊な存在です。(p.260)
  • ストラディバリウスやグァルネリの価値を100としたとき、数万円で手に入るバイオリンの価値がゼロなどということはありません。
  • …でも、特別なブランドって、そういう催眠術を大衆にかけがちなんですよね。。
  • それが特別な逸品でなくても、別に奏者がプロでなくても、誰かが眼の前でバイオリンを弾いてくれたら、じゅうぶんワクワクします♪

特別ではないものの価値は、決してゼロではない。そのことを忘れさえしなければ、ストラディバリウスの幻影は霧散し、真実が私たちの前に立ち現れると、私はおもっています。

 

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