hana_kotoha

クラシック花言葉 – 贅沢すぎる時間

セレブで優雅な気分を、ぜひバッハで

「モーツァルトはヒーリング効果があって、よく眠れるから好き♪」という声はよく聞きます。

「伝統芸能」として格調高いイメージのある歌舞伎も、歴史を辿れば「能」を庶民的にした「狂言」をさらに大衆向けにアレンジしたものです。

そう考えれば、歌舞伎同様に歴史の積み重ねを持つクラシックも、私自身はあくまで「ごきげんな音楽」として愛聴しているものの、もっと新しい音楽の方がとっつきやすく、「クラシックはお硬い」と思われてしまうのも無理はないかな、と感じます。

「お硬い」かどうかは人それぞれの感じ方であるとしても、「演奏時間がやたらと長い」傾向にあることは、否めない事実です。

そこで、それを逆手に取って、「2時間くらい、ずっと掛けっぱなしにできるBGMで、ヒーリング効果も(多分)期待できつつ、格調高いクラシック」として、こちらをご紹介申し上げます♪

【J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ】

可愛らしいお嬢さんが演奏されている動画がありました。

5分ほどの演奏「パルティータ 3番の前奏曲」ですが、とても素敵な演奏です♪

こちらを聴いていただいて、もし気に入っていただければそれで、私の文章など蛇足にしかなりませんが、いちおう補足をさせてください。

…たった一人、バイオリン一挺でステージの上に立つ曲というのは、実はとても少ないです。(偶然にも、ステージの背後に「空席」のピアノが置かれています)

「ピアノ・ソナタ」と言えば、それは普通にピアノだけで演奏される曲を指しますが、どういうわけかほとんどの「ヴァイオリン・ソナタ」は、ピアノの伴奏が必要なのです。。

ヴァイオリンが奏でる「ハーモニー」

従ってこちらのバッハ(1685-1750)の作品は、ヴァイオリン・ソナタではなく、「ヴァイオリンの独奏」と表現する方がより分かりやすいです。

そして、一挺のヴァイオリンだけを携えてひとりステージに立ち、ソロ・ヴァイオリニストが2音以上のメロディを弾かせる曲は、この作品以降、バルトーク・ベーラ(1881-1945)がチャレンジするまで、ほとんど音楽史に現れていないそうです。

少し前に「ストラディバリウスをファイブスター物語で喩えて」説明してみましたが、このプレミアつきまくりの楽器の製作者であるアントニオ・ストラディヴァリ(1648-1737)とバッハがほぼ同時代であること。つまりヴァイオリンという楽器が、バッハの時代に完成していたことは、無関係ではないはずです。

事実、ピアノ版「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」とも言える「平均律クラヴィーア曲集」という同じくバッハの作品は、現代でこそピアノ演奏が多いので「ピアノ版」と書いてしまいましたが、「クラヴィーア曲集」という名の通り、クラヴサン(チェンバロ)での演奏を想定して作曲されており、バッハの生きた時代にピアノという楽器はまだ発明されていませんでした。

「なんでそれをピアノで演奏するの?チェンバロでいいじゃない」という疑問も湧いてくるかと思います。

ここがまた、面白いのですが、「チェンバロ」という楽器は確かに現代でも使われます。演奏も、CDで用意に手に入ります。スコット・ロス(1951-1989)などが代表的な名手です。

そのCDのジャケットを見ると、必ずこう書かれています。「17xx年製〇〇教会レプリカ使用」等。

チェンバロという楽器は、「完成」したヴァイオリンと異なり、「未完成」に終わったと言えるかもしれません。つまり、過去に作られた1台1台が「別の楽器」に聞こえるほどに異なる音を発するため、現代でチェンバロ演奏をする場合、「どの音色のチェンバロを使ったか」を明記しているのです。

映画1本分、ひとりのヴァイオリニストが音楽を生み出し続ける

…話が逸れました。

ヴァイオリンは、ピアノなどと比べても、体への負担が大きい楽器と言われています。

80歳を過ぎても鍵盤に向かうピアニストもいる一方で、殆どのヴァイオリニストは60歳くらいで「引退」します。

そんな過酷な楽器であるヴァイオリンで、2時間以上の演奏時間となれば、「一発録り」はあり得ないでしょう。ちゃんと調べたわけではありませんが、コンサートでこの「ソナタとパルティータ全曲」を演奏しきるということは、過去例があるとは思えません。…将来的に、野球の大谷さんみたいな人が出てこない限りは不可能と思われます。

…そういう、「体力あってこその才能」という風潮が広がると、またどんどんと「ヴァイオリンは男性のもの」になってしまう危惧も抱きますが。。

 

それはさておき、「格調高い」イメージのあるクラシックをBGMとして流すようなシチュエーションを想定し、「本気で格調高いけど、いい?」みたいな使い方をする際の筆頭として、こちら、J.S.バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲」のCDをおすすめいたします♪

なにしろ一挺のヴァイオリン以外の音はまったくしないので、耳障りもよく優雅です。そしてヴァイオリン一挺以外の音がまったくしないということが、数多のクラシックの曲の中でも極めて異端であること。

そこまでポピュラーではないかも知れませんが、ところどころの旋律は、多くの人が耳にされている可能性が高いこと。

「あら?これ、聞いたことがあるメロディだけど、なんていう曲?」とかお客さまに訊ねられた折に、私の拙文が少しでもお役に立てれば、うれしいです♪

【イザベル・ファウスト:J.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲】 (2009/2011)

※シングルレイヤーSACDです。CDのつもりで購入してはいけません。

ヴァイオリニストにとって、「聖典」とも呼べる神々しい作品ですので、CDは相当数出ています。…ですが、「これ!」と言えるような歴史的名盤はどれも録音が古く、BGM的に聴くと時代錯誤に陥ってしまい、全然セレブっぽくなくなります。。

そして、現役で頑張っておられる第一線のヴァイオリニストたちの録音は、音はよいですが、「曲に負ける」感じになってしまうことが多いのは、仕方がないこととおもいます。

こちらイザベル・ファウスト版はいっとき、レコード会社のカタログ付きで1,300円というお値段で、通常CD版が店頭に並んだことがあり、私はそれを購入しました。

結果、今では一番よく聴く「無伴奏ヴァイオリン〜」になっています♪

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