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CD1枚ぶんのオペラを – ワルキューレ第1幕をとおして

クラシックのCDがあっという間に1,000枚を超えてしまう理由

たとばビートルズのファンが「CDを全部買い揃えよう!」とがんばっても、彼らのオリジナル・アルバムは13枚しかないので、本気になるとあっけなく目的が達成されてしまうといいます。

ジャズやクラシックは、ライブ演奏をぽんぽんと商品化するからだとおもわれますが、「コレクティング」に終わりがありません。マイルス・デイヴィスなどは、マニアの間で有名なこんな本がございます。

【中山康樹著:マイルスを聴け!<Version8>】

軽妙な文体の心地よい評論家さんでしたが、2015年に亡くなられていたとは、知りませんでした。。それに伴って、中古本の市場価格もすごいことになっております。

1153ページに渡り、マイルス・デイビスのCD(ほとんどが海賊盤)が紹介されています。…単純計算で1,000枚はあるはずです。

 

また、とくにクラシックの音源に多いですが、「ボックス・セット」という商品があります。ぱっと見たところ、こちらなど、かなりの迫力があるのではないでしょうか?

【バッハ・セット(172枚)】

…所有CD1,000枚まで、残り828枚ですねっ♪

オペラもCD枚数が多いです!

ひとつの「作品」として演奏時間が長いもの。すなわちCD枚数が多い代表は、オペラ作品かな、とおもいます。

記録として確認をしたわけではありませんが、ワーグナー畢生の大作ニーベルングの指環が平均枚数14枚で、私の知る限り箱が一番分厚いです。

3大「リング」?

「リング」の名を冠する作品には、マスターピースが多いようにかんじます。

ジャバニーズ・ホラーの金字塔である「リング」。ファンタジーの原点にして頂点である「指輪物語」。そして今回ご紹介する「ニーベルングの指環」(以下、指環)です。

指環は「ラインの黄金」「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」という4部から為り、その演奏には4晩を費やすという、演奏会というよりもひとつの観光になってしまう規模です。

作曲者ワーグナーは、録音技術のなかった19世紀の人ですので、もちろんCDで14枚にもなるなどという計算はあろうはずもなく、ライブでの上演および観賞を想定して作られた作品です。…もう、すごいとしか言いようがありませんね。。

そういう時代だったのでしょう。ワーグナーは作曲に飽き足らず、バイロイト祝祭劇場というオペラ・ハウスまで設計してしまいます。あまつさえ遺作「パルジファル」は、作者の死後数十年にわたりバイロイト以外での上演を禁じられていたそうです。

なんとか、お手軽に、オペラを…

「指環」には、誰もが知っている「ぱっぱかぱーんぱん、ぱっぱかぱーんぱん、ぱっぱかぱーんぱんぱっぱかぱーん」というフレーズ「ワルキューレの騎行」が含まれます。第2部「ワルキューレ」第3幕の序奏に位置します。

第2部「ワルキューレ」自体、全4部の中でもとりわけ人気が高いですし、この「第2部」だけを聴くことは私もたまにします。私が一番お部屋でかけるのはこちらです。

【ヴィルヘルム・フルトヴェングラー&ウィーンフィル:ワーグナー ワルキューレ(全曲)】

1954年のモノラル録音で、正直音は悪いです。ただ、これが未だダントツの人気No.1指揮者フルトヴェングラー生涯最後の「仕事」ということで、音以上のなにかを聴きとりたい心理が湧いてきます。

…でもCD3枚分あります。やっぱり長いです。アマゾンで、こんなものを見つけました。

【カラヤン&ベルリン・フィル:ワーグナー ニーベルングの指環(ハイライト)】

…たぶん、聴いた気分には、なれるかな?とおもいます。でもそれは「オペラを聴いた!」という感覚とは、ちょっとちがう予感がしています。

自分で聴いていないので確かなことは言えませんが、「ぶつ切り」にもなってしまっているでしょうし、最初からハイライトだけで構成することを意図した演奏ではなく、カラヤンの「指環」全曲録音からの抜粋ですので、演奏は元気に続いているのに、音だけフェード・アウトする編集もあることでしょう。

私としては、欲求不満がたまりそうで、手が出せません。。

オススメの1枚♪

…ひとつ、大きな欠点があるのですが、ぜひオススメしたい1枚がこちらです♪

【ハンス・クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィル:ワルキューレ第1幕(全曲)】

…最初に「欠点」についてご説明申し上げます。当盤「ワルキューレ第1幕」には、例の「ぱっぱかぱーんぱん」は含まれておりません。

大変申し訳ありません。

ですが、それでもなお、こちらのCDを強くお奨めしたい理由は以下のとおりです。

先のビートルズをたとえに出すならば、「ワルキューレの騎行」というフレーズは「ラブ・ミー・ドゥ」とか「イエスタデイ」といった「名曲」に相当するといえます。

一方このCDは「サージェント・ペパーズ〜」に該当します。すなわち「トータル・アルバム」なのです。

「指環」のエッセンスが、この60分に高純度で詰め込まれています。録音もステレオです。演奏は天下のウィーン・フィル。歌手も、私はよく分かっていないのですが、当時の最高の人材を揃えているそうです。

そして何よりも、クナッパーツブッシュという指揮者です!

こちらもオススメしたいです!!

この人のワーグナーは、うまく説明できないのですが、全部母に抱かれた子守唄に聴こえるといいますか、「指環」ではありませんが、ワーグナーの遺作としてご紹介した「パルジファル」のステレオ録音がこれまた有名です。

【ハンス・クナッパーツブッシュ&バイロイト祝祭管弦楽団:舞台神聖祝典劇パルジファル(全曲)】

CD4枚組と、やっぱり長いです。。そして、いつ聴いても自然に涙がこぼれてきます。お休みの日、月に1度は、パソコンに向かいながら通して聴きます。

「リラックスできる!」というタイプのクラシックではまったくないですし、出だしで泣いちゃうのでそこだけ聴けばいいじゃん!というのも正論ではありますけれども、演奏の力とそれから舞台神聖祝典劇とか名乗っちゃうだけあって、すごくホーリーな気持ちになってしまい、途中で止めるとか、できません。。

実験録音だった「ワルキューレ第1幕」

…お話を戻します。この「ワルキューレ第1幕」も、この人のこの演奏に馴染むと、他のどの演奏を聴いても「なにかちが〜う」と感じるようになってしまう説得力を持っています。

ぜひ、クナッパーツブッシュ(以下、クナ)に「指環」全曲の録音をして欲しかった!とは、全クラシックファンの果てない夢のひとつであるのですが、事実、世界初の指環の全曲録音の企画は、クナにオファーがあったそうで、そのパイロット版としてこの「ワルキューレ第1幕」が制作されたそうです。

…ところが当時から「変人」「録音嫌い」として有名だったクナはこの企画を面倒くさがり、その偉業はゲオルグ・ショルティという、当時の若手指揮者によって為されたという経緯があります。

【ゲオルグ・ショルティ&ウィーン・フィル:ニーベルングの指環(全曲)】

こちらのCDは、当時のステレオ録音技術を駆使した意図的な音の加工が積極的に行われています。「音がせり上がってくる!」とも言われますが、ここでオススメしているクナッパーツブッシュの「ワルキューレ第1幕」にも、同様の加工があることに気が付きました。。

…もっとも、今はその「クナの指環全曲」も、モノラルのライブ録音とはいえ普通に入手できます。

【ハンス・クナッパーツブッシュ&バイロイト祝祭管弦楽団:ニーベルングの指環(全曲)】

※ちょっと、アマゾンのレビューを見るに色々と問題のある商品みたいです。。

もともとこのCDについては販売開始時点から、HMVでは買えるけれども長らくタワーレコードでは取り扱いがなかったなど、政治的な思惑を感じる節はありました。

Orfeoというレーベルそのものは、よい商品をたくさん出している有名どころです。

また脱線してしまいました…

ごめんなさい。とにかく「クナのワルキューレ第1幕」です。

CD1枚、約1時間で、たっぷりと「オペラを聴いた〜♪」という気分にさせてくれるこの「アルバム」。色んな意味でお得感満載ですので、よろしければぜひ、ご一聴くださいませ♪

最後に、オススメCDとは別の、クナのワルキューレ第1幕ですが、動画がありましたのでご紹介します。

【ハンス・クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィル:ワーグナー ワルキューレ第1幕(1963年)】

…たしか、こちらも私はHMVで購入した記憶があります。超話題のDVDでしたね!やけに嬉しそうな店員のお兄さんが、特典のコースターを1セット多くオマケしてくれました♪

HMVはクナと深いつながりがあるのでしょうか。。

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