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終わるジャズと終わらないクラシック

「このフロアだけ空気が違う。。」

とは、私が渋谷のタワーレコードの7階を占めるクラシックフロアの椅子で時間を潰していたとき、眼の前を通り過ぎたご夫婦の奥さんが漏らした言葉です。

事実、先日のハロウィンでも大変な騒ぎになったらしい渋谷の街で、おそらくもっとも静かな時間を過ごせる場所のひとつだとおもいます。

フロアに流れる音楽は当然「クラシック」なので、落ち着いた雰囲気に一役も二役もかっています。…他方、辺りを見渡せば。。

みんながスーパーよろしく買い物カゴを持ち、試聴コーナーのヘッドフォンを被り、「エア指揮」に没頭する人も珍しくなく(白い目では見られる)、普通のCDショップの「クラシックコーナー」の2〜3倍くらいの広さの棚に、「J.S.バッハ」のCDだけが延々と並んでいます。

治安が悪い感じはしないので有り難いですが、「女性がひとりでうろつける」雰囲気とは、ちょっと違うかとも思います。。あ、いえ!大丈夫!十分に楽しめますよ!!

ワンフロア下のジャズコーナー

こちらはおそらく、「ブラック・ミュージック」という括りになっているのでしょうか?ヒップ・ホップやレゲエ、あとカントリーやブルースも同じフロアにあります。

いみじくもマイルス・デイヴィスが、「おそらく今後音楽はどんどんと短いものになっていく」と予言し、「オン・ザ・コーナー」という作品で、その未来の一端を垣間見せてくれた通りにブラック・ミュージックは進化し、50年前であればジャズを志した才能は、今は他のジャンルを指向しているとおもわれます。

客層も一転「ザ・渋谷!」という感じの若者が大半で、BGMも独特です。…私も「渋谷のタワレコ」を訪れれば必ずジャズ・コーナーは覗きますが、あんまり落ち着きませんし、「他で見つけられなかったものがここで買えた!」という記憶も特にないです。。

ジャズの場合(それが故人のものであれ)新譜であれば、アマゾンや、もう少し小さなタワレコにもありますし、「掘り出し物」的なCDは、むしろ横浜駅に入っているCDショップや、昔秋葉原にあった石丸電気のクラシック・ジャズ館で「見つけた!」印象があります。

再びクラシックフロアへ

クラシックもジャズも共に「古くさい」イメージを持たれる音楽ファンは、多いのではないでしょうか?

そのとおりだと私も思います。

そしてジャズという音楽の推進力は、既に他のより新しいタイプの音楽に奪われて久しいと、個人的には感じています。大好きな現役ジャズ・ミュージシャンはいますが、ジャンルとしてのジャズは、悲しいことに下火であろう、と。

他方クラシックですが、実のところ新譜はどんどんと発売され、新しい世代の音楽家も誕生しています。…端的に言えば、「作曲家・作品」だけがいつまでも変わらず、夢を実現しようとする若い演奏者はごまんといるかんじでしょうか?

「才能」という意味では、交響曲が書けるような作曲能力を持つ音楽家は現代では、映画音楽の世界に流入している、という話は聞いたことがあります。

 

私も10年は、クラシックを聴いていますが、20年は聴いておりませんので、その範囲で分かる「流行り廃り」を私見ながらまとめてみますと、

  • 情緒たっぷりで「お上品」な演奏は、トスカニーニ→カラヤン路線の、より颯爽とした演奏の登場でかなり色褪せた。
  • フルトヴェングラーの「後継者なき死」によっても、カラヤン路線に主権が移った。
  • 「ピリオド演奏」という、「バッハが生きていた時代の楽器は、今よりも音がショボかったはず」という研究に基づく「リアル指向のショボい演奏」が一時期大流行した。
  • 日本のバブル期で言えば、なにしろ指揮者の「カルロス・クライバー」がマイケル・ジャクソンばりのスーパースターだった。
  • バーンスタインの「布教」によって、マーラー・ブームが到来し、多分次のブームはまだ来ていない。(無調音楽などの現代音楽がそろそろ流行るはずが、「あれ?まだ流行らないぞ?」という感じで評論家筋は見ているもよう)
  • 一般的にも著名な「カラヤン」は、マニアックではないので当然マニアに人気はない。生前は「アンチ・カラヤン」も多かったのでしょうが、「いや、悪くないよ。レパートリーは広いし、オケ(オーケストラ)も豪華だし」という「ベンチマーク」的扱いかと。
  • なにしろバッハが色褪せない。「マタイ受難曲」(合唱曲)「平均律クラヴィーア曲集」(ピアノ、チェンバロ)「無伴奏バイオリン・ソナタ&パルティータ」(バイオリン)という、いずれも3時間以上要するような大曲(集)が、ある種の「マイル・ストーン」的に屹立し、マーラー交響曲第9番と同様、新譜が出るとそれだけで話題になる。

このように俯瞰しております。

 

どうしても「リラックスできる」「よく眠れる」という理由で愛聴されてしまうことの多いクラシックですが、文芸・音楽・美術・映像・ゲーム。。どんな創作であれ、

「自分の作品で眠くなってほしい」

と願っていないことだけは、間違いありません!!

モーツァルトを聞いて眠くなるのであれば、その作品(演奏)にはやっぱり、既にエネルギーがないのです。。

今、もっとも「クラシック的」に「美しい」音楽をひとつ挙げなさいと、私にご用命いただければ、マーラーの交響曲第9番を全力で推薦申し上げます♪

…美しい旋律が多く、同5番とは違い耳障りな音も控えめで、「彼岸の曲」とよく形容されます。多くの指揮者・オーケストラが、「満を持して」取り組む曲目であり、どれを選んでも、眠くなる演奏では、決してないと思います〜。(T_T)

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