という一文から、浅見光彦最後の事件「遺譜」は幕を開けます。
開始早々、「永遠の33歳」と呼ばれ続けた浅見光彦34歳のお誕生日会が、盛大に執り行われますが、これにより浅見光彦の生年月日が明らかになりました。
以下、根拠と併せてご紹介します。
- 1985年生まれの人が23歳で登場している。(物語は2008年)
- 浅見光彦は、2008年2月10日に34歳になる。(1974年生まれ)
- ちなみに、兄陽一郎は1994年の回想に34歳で登場している。(1960年生まれ)
…本人は嫌がる情報ですが、二人の御母堂・雪江はこのとき70歳だそうです。(1938年生まれ)
「最後の事件」と名乗るものの、著者もあとがきで、「そうは言ったがまた書くかも知れない」「(本作以前に起こった)未発表の事件簿はまだある」と語っていました。ですが、惜しくも本年2018年3月13日に83歳で亡くなられました。
未完の「孤道」を除けば結局この作品が、浅見光彦シリーズ最後の作品となってしまいました。。
お誕生日会には、歴代ヒロインが勢揃い!
私は浅見光彦シリーズを、すべて読破できているわけではありませんが、「ああ、あの女性!」と思い当たる方も、大勢再登場しています。
そのうち4名ほどが、今回の「事件」と直接的・間接的に関わってきます。
文庫本で上下巻構成になっていることもあり、また舞台が海を渡ってドイツ・オーストリアにまで広がっている、とてもスケールの大きな作品です。
フルトヴェングラーも出てくる!
タイトルの「遺譜」は、私もご贔屓のクラシックの指揮者であるヴィルヘルム・フルトヴェングラーが書いた譜面が、実は日本にある!という設定から来ています。
ネタバレは控えますが、作曲家フルトヴェングラーの自曲の譜面なのか、指揮者フルトヴェングラーが使った他の誰かの楽譜なのかは、ちょっともやっと書かれていて、断定できませんでした。
フルトヴェングラーの来日計画は実際にあり、そして作中にあるように頓挫していますが、その辺りを描いた書物が参考文献として挙げられていました。
内田康夫作品未読の方に向けて
私も、内田作品を読むようになって、10年は経ちません。
柔らかすぎず、堅すぎない文章はとても読みやすく、また、緻密な取材に基づいて描かれる土地々々が、活き活きと魅力的に輝きます。特に映画化もされた「天河伝説殺人事件」の奈良地方には、私は危ういほどの憧憬を抱いています♪
著者自身が晩年を過ごした軽井沢は、ひときわ深い愛情を持って描かれ頻繁に登場します。(著者本人も、「軽井沢のセンセ」として頻出します)
あとは著者自身が、第二次世界大戦によって激動の時代を過ごした世代ということもあり、ひと言「憂国」と簡単に片付けてよいものではありませんが、社会問題に対する様々な示唆、問題提起、そして明確な思想も見られます。
ものすごく薄っぺらい感じのご紹介になってしまいましたが、へんな癖もなく安心して読める、本当に良質な推理小説ですので、ぜひぜひ一人でも多くの方に、「内田康夫作品」に触れていただきたいと、願っております♪