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ジャズとダムナティオ・メモリアエ

懐古主義としてのジャズ

アメリカで普通に人気のある音楽のジャンルは「カントリー」みたいなものであって、日本で話題になるようなアメリカの音楽は、アメリカでも先進的で「これから」の音楽だとよく言われます。

日本でも高齢者を中心に、まだまだ演歌にも人気があるということと似たかんじでしょうか?

ジャズについて、書いてみようとおもうのですが、「日本のジャズ」は少しばかり、ロック、ヒップ・ホップ、クラシックなど、その他のジャンルと事情が異なり、正直不穏な感じを以前から強く抱いています。

バディ・リッチ(1917-1987)、スティーブ・コールマン(1956-)、ウィントン・マルサリス(1961-)

こちらの3名は、いずれもジャズ史に名を残す「名人」たちです。…と同時に、日本の「ジャズ論」の中で、少なからず批判的に書かれたものを、私自身が目にしたミュージシャンでもあります。

…彼らのアルバムを、それほど大きくない(特に輸入盤などを扱わない)街のCDショップのジャズコーナーで見かけることは、ほとんどないとおもいます。

70年代の学生運動の空気と「日本のジャズ(喫茶)文化」には、切っても切れない絆が未だにあるようです。

私自身はそういうところとは殆ど縁がありません(ジャズにそんなに詳しくない)ので、内情は分かりかねますが、音楽そのものよりも、権威者の発する「活字情報」で日本のジャズ・マーケットが大きく左右されることは、薄々感じています。

もちろん功罪ともにありますので、よい例としては、それまで入手困難だったアルバムに陽の目が当たり、発売元も再販に踏み切る、といったこともあります。

【ビル・エヴァンス:You Must Believe In Spring】(1981)

こちらなど、その代表例と言えるかとおもいます。

 

他方、「記憶の抹殺」に近い仕打ちを受けたのではないかと思われる人の一例が、上記3名です。

ダムナティオ・メモリアエ(記憶の抹殺)

…元は古代ローマの言葉だそうです。

我が国でも有名なローマ風呂漫画「テルマエ・ロマエ」で描かれる皇帝ハドリアヌスも死後、彼を憎む政治的権力を持つ人々によって、この「記憶の抹殺」が行われかけたと言われています。(「テルマエ〜」の中では、少しのぼおっとした感じに描かれるアントニヌスが、それを涙ながらに阻止したそうです)

ひとつの時代を統治した君主を、その功罪どころか、あわよくば名前(存在)すら、歴史から抹殺してしまおうという怨念めいた力。

 

特にウィントン・マルサリスというジャズ・マンは、新人の頃に「日本人にジャズなんて分かるはずがない」的発言をしたことが原因なのか、日本のジャズ文化的には徹底的に嫌われているようです。「史上最高のトランペッター」と言われることさえ、あるにも関わらず。。

バディ・リッチも、「ザ・グレイテスト・バンドリーダー・アンド・ドラマー」でアメリカでは通じるらしい(というかそう訊かれた)のですが、「えっ?アート・ブレイキー??」とか答えた私に、そのアメリカ人は悲しそうに首を振ったのでした。。

「フュージョン」と区分けされるジャンルも、ジャズよりも1段格が落ちるような扱いを、日本のジャズ文化的には受けておりますが、「ジャズよりも分かりやすい」せいか、CDショップはがんばって並べていますし国内盤も豊富にあります♪

あと20年新作が期待できるジャズ・マン

最初に「懐古主義としてのジャズ」と見出しをつけました。

これは日本のCDショップに行くと、もう鬼籍に入った「ジャズ・ジャイアンツ」たちの「新譜」が、現役ミュージシャンを押しのけて「当店イチオシ!」として陳列されていることを揶揄しています。

…その脇に「○○○○氏推薦盤!」と、有名評論家オススメシリーズとして、現役ミュージシャンのアルバムも並んではいるのですが、そのジャケットが大抵女性の裸であることに私は正直辟易しています。。

 

と、色々面倒な事情の絡む日本のジャズ文化および市場ですが、権威に嫌われているものは手に入らないので仕方ありません。一方その権威におもねてみても、お気に入りの1枚に出会える保証はありません。。

以下にご紹介する1枚は、

  • 別に権威に嫌われてはいなさそうで、大手のCDショップで輸入盤が買え、
  • 精力的に活動されていて、年齢的もあと20年は新作が期待できそうで、
  • ジャズを聴かないお友だちに強引に聴かせて、「あ、これ好き♪」と言われた

稀有なものです。(ワルツ・フォー・デビイを除き、これが唯一の例。実はマイルス・デイヴィスの「パンゲア」にも、「女子の琴線」に触れるなにかがあるらしいが、現在検証中)

Amazonでたまたま見つけて、何故かすごく気になってポチってしまいました。

結果大当たり!で、以来この人の新作は、お店で見かけるたびに買ってしまいます♪

【ブラッド・メルドー:Highway Rider】(2010)

ブラッド・メルドー。日本ジャズ文化の旧弊に関与することなく、これから日本でも人気が出て、普通に「国内盤」が出るようになってくれたら、嬉しいです♪(私は輸入盤を買いますが。。)

本アルバムの一曲目をどなたかがピアノ・ソロでカヴァーした動画がありましたので、ご紹介申し上げます。ご興味を持たれましたら、ぜひ「本家」もご一聴ください♪

【Brad Mehldau:John Boy】

再び「記憶の抹殺」について

…音楽の好みと同様、私の私見にすぎませんが、記憶の抹殺という力は、現代の凶悪殺人について、適用する価値があるのでは?と考えることがあります。

…社会復帰した加害者が本を出版するような行為に対して、私たちが「人として」なし得る抵抗のひとつ。

「人として理解できない」行為を後世に語り継ぐ意味はないと思います。

理不尽な犯罪は、治安がいくらよくなっても、そこからこぼれ落ちるごく少数の異分子が起こすものである以上、教育や文化の問題ではなく、単なる確率であり、もはや事故としか言えず、制御も根絶も不可能です。

記憶を再犯防止に役立てる術があれば別ですが、もしそうでないのであれば、それはゴシップに過ぎない。「お金を払ってくれる民衆がいるから、メディアがコストを掛ける」対象になっているだけ、なのかな?と。

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