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STAX – ヘッドフォン日本代表

メルセデスがエンジン音を聞くために求めたヘッドフォン

…自国にゼンハイザーという銘器があるにも関わらず、です。。

 

STAX(スタックス)というヘッドフォンメーカーおよび製品は、ソニーやオーディオ・テクニカに比べて、知名度はとても低いです。。

ですが、まごうことなき日本を代表するヘッドフォンであり、次のような特徴を持っています。

  • 埼玉県三芳町にある「有限会社スタックス」が、ほそぼそと作っている。
  • 静電型ヘッドホンという、他のメーカー(ダイナミック型)とは違う方式で作られている。
  • 普通のイヤホンジャックには挿せず、専用のアンプが必要。
  • 「音の解像度が比類なく高い」と言われる。
  • 携帯性はゼロ。
  • 見栄えはまったくしない。

いちファンとして、あまり冷静ではない感想を申し上げますと、他のメーカーの製品では聞こえない音を聴くための装置であり、なおかつ、電源を入れてヘッドホン(以下、イヤースピーカー)を頭にかぶせると、そのず太いコードの所為もあってもう身動きが取れないので、諦めて音楽に没頭するしかなくなる、というシロモノです。

メーカー直販サイトのリンクです。

こちら、アフィリエイトなどではありません。近年外国の資本に買われたと聞いておりましたが、フォトフェイシャルでご紹介したパレスクリニックばりの、訪問者を心配させる見栄えのサイトであったものが、いつの間にか、とっても商売上手な作りに変わっており、ものすごく安心しました!

スタックスの製品は、1円でも多くメーカーにお金が入る方法で購入したい!と常に思っています。

スタックスで音源の限界を聞く

ひとつ、声を大にしてお伝えしたいことがあります。

スタックス製品は、アンプを伴った再生装置ですので、当然ボリュームつまみがあります。

ですがこのパーツは、音量調整のためにあるわけではありません。

音の生命力を増幅させるために存在します!!(私見)

 

…ほとんどの場合、ボリュームをMINからMAXに回していく途中で、「あ、この録音の限界はここなんだ」というポイントが聴き取れます。私の狭い見識と乏しい感性の中からですが、3枚ほど、スタックスと相性がよくって限界が分かりやすいとおもったアルバムを、ご紹介しますね。

【遊佐未森:水色】【ノラ・ジョーンズ:come qway with me】【カルロス・クライバー:ベト7】

このうちCDは左の「水色」だけで、残りふたつはいずれもSACD版を聴いています。

水色

1曲目の冒頭に流れるフルートの音色が、どこどこまでも伸びていくのがとっても心地いいです♪

…ただ、このアルバムでスタックスと一番相性がよいのはここなので、もちろんそれ以降も、澄んだボーカル、ギターの温かい音色、ともによいですが、なんと言っても出だしのフルートです♪

ボリュームを調整している間に終わってしまい、何度も聴き返すことになります。

come away with me

大好きなアルバムですが、のらじょんにはちょっと、貧乏くじを引いてもらってしまいました。。

こちらのSACDはあまり音質の評判がよろしくなく、少なくとも今、アマゾンでは取り扱いがありません。

最近のハイレゾ界隈でも、似たようなことがあるらしいのですが、ご本人たちには申し訳ないと思いつつ、実名を挙げてご説明申し上げますと、

中森明菜のハイレゾは音がよくなる。松田聖子のハイレゾは粗ばかりが目立ってしまう。

というように、なんでも高音質化すればよくなるわけではないそうです。

のらじょんの声は素敵ですが、多分CD向けの録音をしてしまったのではないでしょうか?

1980年代の、「CDさいこー!」という時代の録音の中には、いくつかこういった、あとになって振り返ると「技術の後退に巻き込まれた名盤」があります。

当時の最新技術であった16bitでのデジタル録音をしてしまい、「時代遅れ」とばかりにアナログテープには記録されなかった録音の場合、ハイレゾ化してもCD以上の音質になるだけの情報がないのです。。

私の知る「悲しき名盤」を活字だけでふたつばかり、ご紹介します。バーンスタインのグラモフォン版マーラー交響曲全集と、エリアフ・インバルの同じくマーラー全集です。

確固たる情報を持っているわけではないのですが、ずっと待っているのに、一向にハイレゾ版の発売される気配がありません。。

クライバーのベト7!

このSACDは、カルロス・クライバー(1930-2004)の死後の2007年に発売された、1982年の演奏です。

…時期的には上記「悲しき名盤」と重複しますが、この演奏はカール・ベームという指揮者の追悼公演での録音だそうで、ソフト販売の意図が薄かったのでしょうか。アナログ・テープで記録されているらしく「当時の最新技術であったデジタル録音」が使えなかったのかも知れません。。

 

クライバーが生前この演奏の発売を許可しなかったのは、演奏ミスがいくつかあって、それがオーケストラの名誉を傷つけることになることを危惧したためと言われています。

事実、同じ日に演奏したベト4の方は早々に発売され、以前から名盤の誉れ高いです。

【カルロス・クライバー:ベト4】

また、カルロス・クライバーのベト7でいちばん世評が高いのは、実は我が国のNHKが音源を所有している日本公演での演奏と言われています。私も聴いてみました。完成度が高くかつ、十分にクライバーっぽい名演だとおもいます。

【カルロス・クライバー:ベト4&ベト7&J.シュトラウスⅡ こうもり序曲】

…ですが、スタックスを介してSACDの音を聴くだに、1982年版の演奏の持つエネルギーは異常です。

私個人の性癖だとはおもうのですが、ワルツ・フォー・デビイでも演奏そのものではなく、グラスとグラスがぶつかる「かちん」という音が生々しいと、音楽も好ましく聞こえてしまいます。

1982年版クライバーのベト7にも演奏の冒頭、木のスティックが落ちて床を転がる音が混じっています。まず、この音にぞくっとしちゃいますね!

「聞く」から「聴く」へ。そしてさらに、「聴く」から「聞く」へ

ボリュームを上げていくと、音量が大きくなるのではなく、音の情報量が増えます。聞こえてこなかった小さな音が立ち現れてきます。

イヤースピーカーとは呼びますがヘッドフォンなので、お腹に響いたりはしません。森に佇んでいて、突然風が強くなるイメージです。自分が様々なものに包まれていることを急に実感します。

無意識を含めて、人間が認識できるレベルを超えるのでしょう。音楽を「聴いて」いるはずなのに、自分の意思とは関わりなくその場にぽつんと置かれ、知覚可能な範囲で「聞く」状態に変化します。

…あとはもう、音の洪水に呑まれて、40分という時間が過ぎるだけです。

 

クラシック愛好家の悪癖として、フライング・オーベーションという、演奏が終わる前に「私は感極まった!」と主張するかの如く、拍手なり「ブラボー!」なりを開始してしまう迷惑行為があります。

この演奏の終焉はその真逆で、一瞬の静寂のあとでぱらぱらと、そして次第にその拍手が大きくなります。SACD+STAXですと聴衆の「唖然」としている様が、手に取るように分かります。

…いいえ。私自身が当時その場にいた人たちと同様、唖然となるのです。

STAXの音は、価格が200倍のスピーカーに相当する

…でも、大好きな音楽をできるだけよい音で聴きたい!という願望は、人として自然な感情だともおもいます。

スタックスは「身動きのとれないヘッドフォン」なので、一箇所に腰を落ち着けて音楽に集中する必要があります。「イヤースピーカー道」とでも言うべきでしょうか?

でも、本当に「音の魂」が聞こえます。同等の音をスピーカーで鳴らそうとすると、200倍のお金が掛かると言われることもあります。

秋葉原のヨドバシカメラなどでも試聴できるので、ご興味を持たれた方は、見た目は滑稽になりますがぜひお試しくださいませ。そのときくれぐれも、

  • 音源のポテンシャルの限界までボリュームを回すこと

を、どうぞお忘れなく♪

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