yuki_record

年齢とともに輝きを増す美しさ

一般的に無名な人気作曲家

アントン・ブルックナー(1824-1896:72歳没)という作曲者がいます。ベートーヴェンが亡くなる3年前に生まれ、大体ブラームスと同時期に活躍し、マーラーは彼に教えを請うたというような世代の人です。

由紀レコオドにいらっしゃるようなお客さんにとっては、マーラーと拮抗するような人気作曲家らしいのですが、私はお店で耳にするまで、まったく存在も知らない人物でした。

…とにかく、女性にはまったくモテなかった人らしいです。そういうお話を聞くと、申し訳ないんですが、なんとなく敬遠してしまいますよね。。

確かにモテなさそうな名曲

私が最初に「これ、いいかも?」と思ったブルックナーの演奏は、ハンス・クナッパーツブッシュ(1888-1965:77歳没)指揮の交響曲第8番でした。

ハンス・クナッパーツブッシュ&ミュンヘン・フィル:ブルックナー交響曲第8番(1963年)


…どう、表現すればよいのでしょうか?再生ボタンを押すと、まずもっさりと曲が始まります。もちろんメロディはあるのですが、口ずさんだり聴いていてうきうきするようなものではありません。それから、音が突然止みます。ブルックナー休止と呼ばれるらしいのですが、演奏の途中でそんなことをされてしまうと、聞いている方も調子が狂います。

というように、なんともこちらをいい気分にさせてくれない曲調というのが、ブルックナー作品の特徴と言えるでしょうか。

ただ、CD2枚組、80分を超える演奏を最後まで聴き終えてみると、なんだかよかったかも?と思えるから不思議です。

事実クラシック音楽の歴史の中でもブルックナーは、誰から影響を受け、そして誰にその作風が引き継がれたのかが明確ではない、突然変異的な作曲家と見なされているようです。

そして、自身の死により最終楽章が書かれなかった交響曲9番は、お弟子さんたちが補稿を試みるも、どうしてもブルックナー特有の「あの感じ」が出せず、うまくいかなかったのだそうです。

私が若い頃は…

セルジュ・チェリビダッケ(1912-1996:94歳没)という指揮者がいます。この人は、「私が若い頃はブルックナーをまったく理解していなかった」と言ったそうですが、若い頃とは具体的に52歳の自分を指していたとのことです。…そんなに若くは、ないですよね。。

チェリビダッケのブルックナー8番で、私が一番好きな演奏は、残念ながら現在入手困難となっています。幸いYoutubeで動画が見つかりました。

AUDIORのチェリビダッケ:ブルックナー交響曲第8番(1994年?)

チェリビダッケは、とても耳がよいことで有名だったそうで、素人が聴いても、とても繊細な演奏であることが分かります。バイオリンの高音の響きが美しく、うっとりしちゃいます♪

いわゆる海賊盤なので、情報の正確さは不明ですが、指揮者の最晩年1994年の演奏と言われています。

80歳を過ぎてから有名になった指揮者

もうひとり、ギュンター・ヴァント(1912-2002:90歳没)という指揮者を、ご紹介いたします。

この人もブルックナーを得意としていたのですが、世界的な名声を得たのは1990年代に入ってからだそうです。

ギュンター・ヴァント&ケルン放送交響楽団:ブルックナー交響曲全集(1974-1981)

人が老いる価値

失われていく己の若さを、冷静に見送る勇気は私にはありません。。

年齢相応の美しさ、品位、円熟味。これらの言葉で自分を慰めようとしつつ、「でも、若い方がいいに決まっているでしょ?」などとおもってみたり。とにかく美容には気をつけて、試行錯誤を繰り返しています。

 

図らずも、女性にモテなさそうな音楽として、ブルックナーを記事にしてしまいましたが、別の一面として、天上の音楽という表現も、ブルックナー作品に対して使われることが多いです。

たとばベートヴェンですと、5番(運命)はなんとなく怒っています9番(合唱)は人生賛歌です。…というような分かりやすい人間味が、ブルックナーの作品にはないので、感情を揺さぶられるような音楽では、確かにありません。

でも、自分の理解の及ばないところで荘厳に鳴っている音楽と考えてみると、音に包まれる感じがとても心地よいです。

白鳥の歌

死というイベントの先には、なにかがあるのかも知れません。なにもないのかも知れません。それは分からないけれども、きっと、10年後20年後に聴くブルックナーは、また違った印象を与えてくれるのでしょう。

それはここにご紹介したように、高名なブルックナー指揮者が、人生の終わりに近づくにつれ、その輝きを増している例が散見されるからです。白鳥の歌とは、シューベルトの歌曲ですが、白鳥は最期の鳴き声がもっとも美しい、という故事から取られているそうです。

私もそれを楽しみにしています♪

年齢とともに輝きを増す美しさ” に2件のコメントがあります

  1. ブラックナーほどジーニアスな作曲家は他にいないですね。それになんといっても不器用‼︎

    あの風貌で、遍く巨大な交響曲を書いた、天才中の天才だと思います。

    やはりチェリビダッケ&ミュンヘン、リスボンでのライヴは人知を超えている。

    1. 平田さま。
      コメントをくださいまして、ありがとうございます♪
      お返事遅くなりましたこと、お詫び申し上げます。
      はい。音楽の素養のないわたしには、皆さん甲乙つけられず素晴らしいのですが、未完に終わった9番の最終楽章など、お弟子さんが補完しようとしても、どうしてもお師さんのようにはできなかった。というところが、ブルックナーの異様さを表しているように感じます。
      ブルックナー休止など、いまだに他の人が真似をしても、へんてこりんなだけだと思いますし。。
      わたしも、ソニーさんとアルトゥスさんが別々に出しているチェリビダッケ東京ライブの8番と聴き比べはしているのですがなぜか「緑のCD」のようには、楽しめないです。。
      こちらとあとは、クナのウェストミンスター盤を交互に聴いて楽しんでおります♪
      よるそら。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です