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官能小説家としての三島由紀夫

おすすめは「音楽」!

エロティックなものはよいと思います♪

あまり直情的なものは困りますし醒めますが、ちょっと難しそうな純文学とかの体裁を持っていたりしてくれると、かなり有り難いですね!

ひと口に純文学と言っても、歴史の推敲に耐えうるかどうかはまちまちで、現代でも多くの人に読まれる作品もあれば、教科書の中でしか息をしていない作家もいたりします。

三島由紀夫作品はとても面白いのですが、その魅力をちゃんと教えてくれる人に出会ったのは、私は一度きりです。学生のころのお友だちでした。三島作品の素晴らしさを熱く語ってくれましたが、まとめるとこういうことなのかな?とおもっています。

  • 三島由紀夫は生前、超売れっ子作家であり、タレントだった。
  • 美輪明宏との深い交流などでも有名。
  • ノーベル賞の候補にも挙がり、作品の芸術的価値も認められていた。
  • 教科書にも載っている。大抵潮騒金閣寺が代表作として紹介されている。
  • …どちらも、愛読する三島ファンは少数派。

【「からっ風野郎」主題歌/唄:三島由紀夫】(1960)

…ふとしたことから、三島由紀夫が市ヶ谷駐屯地で自害した建物の一部を、私が所有することになりまして、その子にプレゼントしたところとても喜んでくれました。

「ありがとう!洗って大切にするね♪」と弾けんばかりの笑顔のその子に、

「えっ?洗っちゃうの?」とか言ってしまい、困らせたこともありました。。

その彼女が教えてくれたのです。

音楽を読んでみて!」と。

「音楽」のエロス

早速文庫本で音楽を買い求めた私ですが、「三島由紀夫って知的でエロティック♪」ということは直ちに理解しました。あらすじを書いてしまうと面白くありませんが、こんなにアカデミックに官能的なのです!というポイントを挙げてみます。

  • フロイトっぽさ:女性は父や兄と違って「自分にはない」ことが心理的抑圧になる云々。
  • バタイユっぽさ:エロスはタブーと表裏一体であり、死に近づいてこそ云々。

三島由紀夫は、当時の大蔵省を退官して作家になったエリートですが、こういうタイプの芸術家って、テーマをどこからか借りてきて、それを器用に料理することで自分の作品にする傾向があるように感じます。

音楽のアイデアがフロイトとバタイユに根ざしていることは、巻末の解説にも書かれているとおり確かかと思います。

遺作「豊饒の海」

三島由紀夫は全4巻に及ぶ豊饒の海の最終話を脱稿した直後に、市ヶ谷駐屯地で割腹自殺を遂げます。

私は音楽も好きですが、それ以上にこの豊饒の海が大好きです。多分、日本人作家の小説の中で一番好きです。

豊饒の海は、主要テーマを今風にジャンル分けすると「転生モノ」になります。純文学作家三島由紀夫の作品としては、意外と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

…正直に申しまして、潮騒とか金閣寺のようなお行儀のよい作品を、よい大人が自分で読むことは稀ではないかと、私などは常々思っております。

また、個人的な感想ですが、当時売れっ子作家として多くのファンを擁していた三島由紀夫の作風は、ひと言で表現すると昭和の昼ドラです。

我が国の、官能純文学作家の頂点は谷崎潤一郎で間違いないと思われますが、谷崎の日本語は格調が高すぎて、忙しい現代人が親しむには敷居が高いです。

三島由紀夫作品の俗っぽさは、間違いなく意図したものでしょうが、江戸川乱歩の普遍性にも通じる感じがします。大正時代の洋館などと同様、時代を超える雰囲気を備えています。

昼ドラですが。。

ここで、豊饒の海を構成する4巻の主人公、それぞれの性別を整理したいと思います。転生モノですから、ひとりの人間(魂)が姿を変えて毎回主人公になっていると解釈できます。

  • 春の雪:男
  • 奔馬:男
  • 暁の寺:
  • 天人五衰:不明

…やっぱり、暁の寺を読んでみたくなりますよね♪

わたし的には、春の雪が大好きすぎます。映画にもなっています。

映画版春の雪(2005)で、主人公松枝清顕を演じるのは、妻夫木聡です♪

主題歌はなんと!宇多田ヒカルですが、あまりにもひとつの時代を代表する歌手すぎて、今聞くと古く感じちゃうかな?と個人的には思います。

監督はこの作品を、三島由紀夫と親交が深かった美輪明宏に観てもらい、及第点をもらえたことでほっとしたそうです。

映画の出来は、私の感想としても及第点レベルですが、原作の日本語の美しさは、初めて読んだときに悔しささえ覚えました。

春の雪と同じくらい、最終巻天人五衰も好きです。

「天人五衰」はミステリーなのかホラーなのか?

ネタバレは避けますが天人五衰という作品は、多くの謎を抱えながら、著者は自死によって己の口を封じてしまいました。それによって小説というメディアを超えた、文字通り命を代償としたエンターテインメントになってしまっています。

世界最高の文学とも称されるカラマーゾフの兄弟も、著者自身のまえがきによれば、2つ書かれるはずだった小説の、前半部分に過ぎません。しかも、重要なのは後半であると言っておきながら前半を書き上げただけで亡くなってしまい、後半は草稿さえ残っていません。

作品の価値だけではなく、インパクトという面でも、三島由紀夫はドストエフスキーに挑んでしまった。そんな風に思えてなりません。

私に三島由紀夫の魅力を教えてくれた彼女も今は、東京郊外のとある見晴らしのよい高台に眠っています。

生まれ変わり。死後の世界。あまり真剣に考えないようにはしているのですが、それでも、もう一度会えるものならば会いたいです。

その代償と言われるならば私は、天人五衰の謎とカラマーゾフの続編は、謎のまま諦めても未練などありません。

音楽

春の海(豊饒の海 第1巻)

奔馬(豊饒の海 第2巻)

暁の寺(豊饒の海 第3巻)

天人五衰(豊饒の海 第4巻)

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